沈丁花の香りの中で。

沈丁花

いつもの道を曲がると、不意にどこからともなく、沈丁花の香りが漂ってくる。
まだ寒い空気の中で、その周囲の気配だけがほころんでいるかのようだ。
冬の中に幻のように香るその匂いは、なんとも微かで、今にも消えてなくなってしまいそうに儚い。
そして、毎年きまってその不意打ちに、なぜだか心のどこかを締めつけられるような切なさで、
胸がいっぱいになる。
それは大人になるにつれて、だんだんと薄れてしまった子供の頃に感じていた世界の感触とよく似ている。
しかし、沈丁花の香りにまつわる特定の思い出がある訳ではなく、
それはもっと本能的な何かで、何処か遠い記憶や感覚に繋がっているような気がしてならない。

そう、いつもの道を曲がると、私は私の中にある未知の何かと密やかに出会うことになるのだ。

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