薔薇の香りと記憶

薔薇の香りと記憶

「薔薇の匂いを嗅いで過去を回想する場合には、薔薇の匂いが与えられたことによって過去のことが
 連想されるのではない。過去の回想を薔薇の匂いのうちにかぐのである。」

とアンリ・ベルクソンは言っている。
なんとも詩的で、ドキッとするような言い回しだろうか。
ニュアンスとして納得はするが、「過去の回想を薔薇の匂いのうちにかぐ」とは一体どういう事なのだろう?

誰しも、ある「匂い」を嗅ぐと特定の「記憶」が想起されるという経験があると思う。
その様なことに対して、それは脳の仕組み上「匂い」を感じる回路と「記憶」の回路が隣接している為に「匂い」と「記憶」の関係性が強い結びつきを持っていると言う事を「知識」としては知っている。
メカニズムとして知らなくても、「あぁ、そういう事あるね。」と納得はするのではないだろうか。

しかし、その知っているという「知識」や「了解」が、本来の「匂いを嗅ぐ」とう事の可能性を
閉じてしまってはいないだろうか? 事実、わたしがこの言葉にドキッとさせられたのは、そのことだった。
自分の中で、「匂いを嗅ぐ」とう事の可能性がどれほど限定されてしまっているかを痛感させられ、
なにも「見ていない」自分をそこに発見することになる。
もちろん、ベルクソンと自分とを比較するのはなんとも無茶なことだけれど、
「匂いを嗅ぐ」という行為においては、そこに差があるわけではないだろう。

そして、その言葉の中になんとも甘い「知」の香りを感じて、思わずため息をつくのでした。

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