青の時間

青の時間

昼と夜の間に世界が青く染まる時間帯がある。昼でも夜でもない間(あいだ)の時間。
朝方の澄み渡る青い感じも良いが、私はどちらかと言うと夕方の「青の時間」に心が惹かれる。
今の季節なら遠くでひぐらしが鳴いているかも知れない。
家々の窓には明かりが灯り、何処からともなく夕飯の美味しそうな匂いが漂ってくる。
近くに居ながらも、出会う事のない見知らぬ誰かの存在をこんなに近くに感じるのは、夕飯の匂いのせいなのか?
そして、その存在がよりいっそうに断絶されて、その人の生活や人生と永遠に接点が無いと強く感じるのは、この世界を染めるような青色のせいなのか?

家の中の見知らぬ人の気配とは対照的に、道を歩く人はうすらぼんやりと輪郭を失い、実態の無い影のように見える。それは、人のカタチをした夜が歩いているかのようだ。
何処にも属さない青い時間の中を行く人は、どこか重力から解放された軽やかさがある。
また、この時間帯にビルの谷間を歩けば、今にも蜉蝣(かげろう)のような透明な羽を生やして
人々が紺碧の空へと飛び立つのではないかと思えてくる。

人のカタチをした夜が濃紺の空気と溶け合う時、街灯に明かりが灯り、夜がやってくる。
青の時間はいつの間にか、音もなく日常へと移行してしまっている。
そして私は、いかにもあっさりとあっけなく、人知れずに夜へと着地するのだった。

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