夜の気配

夜の雨の光

夜の雨、
ビニール傘の向こう側で夜の雨が光の粒になっている。
光は、夜の気配を含み、光にまぎれた夜は
アスファルトの上へ滑るように、雨粒の速度で自由落下する。

通りを行く人々は アスファルトの上の夜を越えて
それぞれの眠りにつく場所へと帰って行った。

アスファルトの上の夜は、朝の光と共に
その気配を消し、朝に溶けて行くのだろうか?

翌朝、
雨の跡が残る道を歩くと、
夜の気配は、湿ったアスファルトの上に残っているようだった。
冬の朝の霜柱の様に、靴底が夜の気配を踏みしだく。

道の上で、朝の光に照らされた夜の気配は、
蒸気とともに朝の空気の中を、空へと昇り
密かにそっと、消えて行く。

富士山

富士山

あけまして、おめでとうございます。

昨年の4月から始めたブログですが、毎回のようにとても個人的な感覚の話を書いて来ました。
デザインブログとしている割に、あまりデザインの話になっていないような気がすることもありますが、私たちの「感じる」ということの中に、デザインの可能性を見つめてみたいと思っています。
私たちがデザインしたいと思っているのは、表面にある色やカタチのみでなく、
その背後の感覚世界に広がる、気配や雰囲気や何となくな部分です。
何となく感じることや、なにか気配として伝わってくる、その背後にある不可視の領域。

それは、デザインとは言えないような領域なのかも知れません。
でも、なにか分からないものへと進んで行くのも悪くないのではないかと思っています。

今年も、感じたことや気になることを書き綴って行こうと思いますので、宜しくお願いします。

ところで、今年の1枚目は、箱根からの富士山にしてみました。
富士山のカタチってなんだかおめでたいですよね。

青の時間

青の時間

昼と夜の間に世界が青く染まる時間帯がある。昼でも夜でもない間(あいだ)の時間。
朝方の澄み渡る青い感じも良いが、私はどちらかと言うと夕方の「青の時間」に心が惹かれる。
今の季節なら遠くでひぐらしが鳴いているかも知れない。
家々の窓には明かりが灯り、何処からともなく夕飯の美味しそうな匂いが漂ってくる。
近くに居ながらも、出会う事のない見知らぬ誰かの存在をこんなに近くに感じるのは、夕飯の匂いのせいなのか?
そして、その存在がよりいっそうに断絶されて、その人の生活や人生と永遠に接点が無いと強く感じるのは、この世界を染めるような青色のせいなのか?

家の中の見知らぬ人の気配とは対照的に、道を歩く人はうすらぼんやりと輪郭を失い、実態の無い影のように見える。それは、人のカタチをした夜が歩いているかのようだ。
何処にも属さない青い時間の中を行く人は、どこか重力から解放された軽やかさがある。
また、この時間帯にビルの谷間を歩けば、今にも蜉蝣(かげろう)のような透明な羽を生やして
人々が紺碧の空へと飛び立つのではないかと思えてくる。

人のカタチをした夜が濃紺の空気と溶け合う時、街灯に明かりが灯り、夜がやってくる。
青の時間はいつの間にか、音もなく日常へと移行してしまっている。
そして私は、いかにもあっさりとあっけなく、人知れずに夜へと着地するのだった。

やもりあらわる。

ヤモリ

目の端になにか黒いものが動いたのを感じたので、ふとベランダに目をやると、壁にヤモリが張り付いていた。動くモノって全然見ていなくても、90度くらい目の端にあるとしても、なんとなく感じている様です。ヤモリもこちらの動きを警戒して、じっと動かずに息を殺してします。
この小さな生き物と私と、お互いに気配を感じているんですね。
意思が通じた様な不思議な気持ちです。お互いの触手が気配を探り合っているようです、
ちょっと気を緩めた瞬間に、一目散に逃げて行ってしまいました。
普段、そんな感覚があることを意識していませんが、ちょっとしたことで眠っている感覚が開かれることもあるのでしょう。
ヤモリは、目には見えない、そんな気配の森の中で暮らしているかもしません。

作家の眼差し:金田実生

金田実生 Mio Kaneda

初めて金田実生さんの作品に遭遇したのは、2003年の府中ビエンナーレ「ダブル・リアリティ―」だっだ。
なんとも、暖かい絵だった。何かを許し、受け入れるような、作家の眼差しをそこに感じた。
柔らかな筆使いの中に浮かび上がる、光の様な植物の様な色彩、
それは、支持体から遊離して鑑賞者と絵とその間に、音も無く静かに、ある印象や雰囲気、
そして、正に気配として伝わって来るのだった。
その気配は、私たちが生きていることそのものと深く関わっている様に思う。
それは私たちが、気づかずに通り過ぎてしまう何かであり、言語化される事の無い何かであり、
視覚の向こう側にある何かであり、意味が与えられることの無い何かだ。
しかし、それらは私たちの生きる世界に声もないままに、そっと寄り添い続けている。

あの時、絵から感じた何かは身体のどこかに残っていて、今でも5年も前のあの展示室を
ありありと思い出す事ができるくらいだ。

そして、この文章を書く今もその気配は濃厚に漂い続けている。

6月20日から恵比寿の MA2 Gallery で金田実生展「宵の晴れ」が開催されます。
今回もとても楽しみです。

上の画像は金田実生さんの作品:日常の強度(部分)

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